「……じゃあ…『笑い泣き』ね。」
私は晴海くんの目の前で……
とっておきの変顔を、彼に披露した。
「………ぶっ……!ちょっと…待て、演技以前の問題発生!」
結果…
彼は腹を抱えて笑い出し、
しまいには本当に目に涙を浮かべていた。
「ぉお~!見事な笑い泣き!」
「…いやいや、これは演技じゃないし!」
「……。え~…?何もそこまで笑わなくたっていーじゃん?」
まだ……
笑い続けている。
馬鹿げているかもしれない。
けれど……
ちょっぴり幸せな涙なら……
苦しくならないんじゃないかなって思った。
「…かわいー顔してやるよなあ、すっげー新鮮。……でもさあ…。」
ピタリと……
笑いがとまった。
「…でも…、それじゃあ意味がない。」
しん……
と…、部屋が静まり返った。
張り詰めた空気。
眉ひとつ動かすことのない、
感情を無にした彼の顔……。
「…『深い悲しみ』。」
晴海くんがそう言った次の瞬間……、
その綺麗な瞳から、
一筋の涙が…………
溢れ出していた。
「……………。」
私はまるでドラマの中の世界を傍観しているようで……
掛ける言葉もなく……
手を伸ばすでもなく……
ただなす術もなく………
見ていた。
君の流すその涙の意味を……
見出だそうとしていた。