「……私……、嘘ついてた。」



「………。嘘って?」



「イブは…本当に仕事だった。でも……あの日は……。」



「…平瀬さん。」



「…え?」


「…嘘…ついたままでいい。それ以上言わないで。」



「…………。」



「…平瀬さんのことだから、罪悪感感じてるんでしょう?そんなの、全然いーのに。気にしなくて。誰だって…特別な日には、好きな人と過ごしたいもんだろ?平瀬さんはただそうしただけ。なんも間違ってはいない。」



晴海くん……、
気づいて……?



「…どっちにしたって、うまく行って良かったじゃん?それに…俺らもまたこうして会えてる訳だし。」



「…………。」



「ノープロブレム。」



「…………嫌だ。」



「…………?」



「そんなんじゃ気が済まない。」



「……何を言うかな…。」



「もっと責めて罵ればいいじゃない。なんで…?なんでそんなに優しいの…?」



「…………。どうすりゃ気が済むの?俺は優しくした覚えもないし、謝られるほどのこともされてない。」



「……私……、晴海くんを失くしたかと思った。あの日以来会えなくて…、もう、二度とこうしてここにいることもないんだなって……。隣りに居るかどうか、毎日チェックして、ベランダから眺めて、もしかして全部夢だったんじゃないかって……。」



「…………。」




「身勝手だね。出会わなければ…こんなことにはならなかったのに…。でも……出会わなければ良かったなんて到底思えなくて……。……駄目だね、情けない。いつの間にか心の支えになっていたことに……気づかされた。」




「……うん、それはきっと……おれも同じだった。」