「………本当に何もしないと思った…?」





晴海くんは、私のすぐ後ろに立っていて……



腕を絡めていた。


肩に置かれた頭から……



シャンプーの、いい香り……。





「…ちょっと……、ねえ、晴海くん……?」



「…随分無防備だよね。これじゃ久住さんも心配な訳だ。」




「………?離して……。」



「…俺さ、イヴの日電話したんだ。平瀬さんの会社に。」



「……え……?」



「…久住さん出てさ…、どういった関係なのかとかしつこく言われて………、咄嗟に、友人ですなーんて苦し紛れの台詞言ったら切られちゃった。」



「……。」



そういえば……


男の人から電話があったって……。






「結構楽しみにしてたんだけどな、クリスマス。…見事に…、振られたけどね。」



「…ごめん……。」





「もしさ、クリスマスに会ってたら……、こんな関係になってたかもなあ…なんて思ったり…。」




耳元に……


晴海くんの吐息が触れる。



顔が近づき…
その距離が、数㎝…


すぐそこにあった。




キス……される…?





私は身動きもできずに……





身体が固まってしまっていた。





どうしよう、とか……



考えるゆとりすらも与えられない。




大きな…緊張が走る。





「ま。結局お互い仕事だったし……こうなる運命だったのかもな。」




「…………。」




ゆっくりと……


晴海くんの身体が離れていった。



心臓が………
うるさいよ。




「…会わなくて、正解。」





寂しそうな笑顔……。


「…………。本当に…仕事だったの?」



「…うん。」



「…何度も電話くれたよね。」



「…うん、遅くなりそうだったし……。」



「…本当に……?」



「…本当。」



「……………。」





嘘………ついてる。


本当なら、どうしてそんなに寂しそうな顔するの……?




「…晴海くん……。」


「……ん?」