「………。…え。何?」
「…クリスマス…。約束してたのに……。」
「……ああ、そのこと?仕事長引いたんでしょー?……気にしてないよ。それに…俺も仕事長引いて家に帰れなかったし。」
「……え?」
「電話したけど出ないし。でも…、平瀬さんも忙しかったから丁度良かった。」
「…………。」
晴海くんの大きな瞳が……
私の姿を映し出していた。
真っすぐに……
逸らすことなく…
訴えかける。
でもね……、
でも、晴海くん。
私はどうしても…
嘘を探してしまう。
晴海くんは優しいから、
きっと人の為に……
どんな嘘だってつける。
ホラ……。
私を見るその瞳が、サミシイって…
そう言っている。
こんな私を……
庇うことなんてないのに。
「……優しいんだね、晴海くん。」
「…え……?」
「……もう二度と…口利いてもらえないんじゃないかって思ってた。」
「…そんなことないって。友達でしょー?」
「……そうだけど……。」
私は平気であなたを裏切ったのに…?
「……忘れてたよ、今言われるまで。…てか、映画の仕事でそれどころじゃなかったな。」
「…………。バカ………。」
絆創膏を貼った指先が……
じんじんと痛んだ。
私は……
あなたのその優しさにもう少し甘えていたくて、けれどそれは許されることではなくて……
何だか、泣きたくなった。
「……泣くの?」
私の顔をじっと見つめて……
晴海くんが問いた。
「…泣かないよ。」
「…泣きたいなら…、肩貸すよ。」
「泣かないって。」
「…いーから、ホラ。」
晴海くんは私の腕を引いて……
ゆっくりと身体を引き寄せた。
あなたの肩に顔を埋め……
私は高まる鼓動と、小さな痛みに問い掛ける。
私は……
泣きたいの?
不意に………
頬に伝う何かがあった。
けれどそれは……
晴海くんの肩へとじわりと滲み…
消えていった。