「だから……、もう会うことも、話することも…二度とないと思ってた。きっと晴海くんは気づいてる。最低な女だって…、知ってる。」



目頭がじわりと熱くなった。



それでも……




涙は枯れる。



あの日、あの時から……




私の頬を濡らすことはなくなっていた。




「…わこ…、大丈夫…?」



「…うん、…大丈夫。」




しばらくすると…



晴海くんが絆創膏を片手に…


駆け寄ってきた。



「………あのッ!」



美帆が突然……、


立ち上がる。




「…私、用事あるのでもう行かなくちゃ。」



「……?美帆?」



何言って……



「…酒好きなわこに差し入れに来ただけなので。なので…、良かったら晴海さん、一緒に飲んでやってくれませんか?」



「………。」



「女のひとり酒もいーけど、このコ酒癖悪くって。」



「……知ってる。」



指に絆創膏を貼りながら…


晴海くんはクスリと笑った。




「……あ~!もうこんな時間っ。彼氏待ってるんで、すみませんがこれで。じゃあ、わこ。また今度飲もうね!」



そそくさと去る美帆の背中に……



「…ごめん!!……お酒、ありがとう。」




私は心からの『ありがとう』を伝える。



親友に……


嘘をつかせてしまった。




「……。美帆さん、彼氏できたんだ?」



「……へ?」



「前に飲み屋で会った時には…いなかったはず。」



「………あはは…そうだっけ…。」



「下手くそな演技だな。」



「…………。」




見抜かれてた……。




「…その嘘に……、便乗させてもらおうか。」



「…え?」



「…酒癖悪い女の扱いには慣れてるし。」



「…ひど……。」



…違う。


そんなこと言いたいんじゃない。


もっと…


もっと言わなければならないことがあるでしょう?








「……ごめんなさい。」









晴海くん……。
約束を破って…
嘘ついて……




ごめんなさい。