「…有名人と友達?!ホントに…そんなコトあるんだあ……。」




夢見心地で騒ぎ立てる美帆をよそに……



私は、私達は……


無言のまま。




間がもたないと判断した私は、紙袋の中に入っていた日本酒を一本取りだし…
それから、割れた方の瓶を紙袋にそのままくるんだ。



「……いたっ…。」



くるんだはずのカケラがひとつ…袋をつき破って、私の人差し指を…刺した。


「…!平瀬さん?」


「わこ。ごめん、大丈夫?」


気づいた美帆がポケットティッシュを取りだし…、それを、私の指にあてた。


じわじわと…


赤の鮮血が、侵食していく。



「大丈夫、舐めとけばなおるよ。…うわあ…、なんか脈打ってる。」


「待って、絆創膏持ってくるから。」


「…晴海くん!いいよ…、大丈夫だって。」


「いいから。…待ってて。」




晴海くんは紙袋を持つと……



そのまま、隣りの部屋に消えていった。






「…ねえ……。」


美帆がぽつりと呟く。



「……なに?」



「アンタたち…、何かあった?」



「…………。」



「随分気まずそうだったじゃない。」



…あれだけ浮かれていながら…、
美帆はちゃんと周りを見ている。



…さすがだ。



「…ん。ちょっとね。」




「……もしかして…、男女の関係になっちゃったとか…?」



「ち、違う違う!そういうんじゃなくて……。」



「…男と女だもん、そういう間違えだって起こりうるよね。」


「…だから、そういうんじゃないって。ただの…、喧嘩。」



「喧嘩するほど…親しい仲だったってこと?」



「…違う……。」



「……?」



「…私が…、約束を破ったの。最低な嘘ついて……。」



「……わこ……。」