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一方……、



晴見うのは……




久々に、自宅のあるマンションへと…足を踏み入れていた。




エントランスを一気に抜けていくと…、被っていたニット帽を外し…



髪をわしゃわしゃと無造作にする。




エレベーターに乗ろうと待機していた所で……


自分の左側に、突然気配を感じる。


「………。」


彼は、わざと右下方向に顔を向けてみた。



これまでこのマンションの人に…声を掛けられたことはない。



そう……、平瀬わこ以外には。




例え芸能人だとバレてはいても、これまでそれで困ったことはない。





さほど警戒を払わず……



エレベーターへと乗り込む。


すると……

もう一人、すぐさまそこへ乗り込んできた。




ボタンのすぐ脇にいた彼は、仕方なく聞いた。




「…何階ですか?」


「…あ。4階です。」











4階に到着すると、相手が降りたその後に……


彼も、そこで降りた。




前を歩く女は、大きな紙袋を抱えている。


しかも…重たそうに、のったりくったり歩いていた。



「………。」



同じ方向に向かっていくせいで、嫌でも目についてしまうのだろう。



彼は彼女のペースに合わせるようにして…


ゆっくりと後ろを歩いた。






そして彼女は…

不意に足を止めた。



彼は…少々ギョッとした。



なぜなら、その女の顔に見覚えがあったから……。



おまけに、平瀬わこの部屋の前で止まっているのだから…



気が気でない。




彼は女の後ろを素通りし、自分の部屋のキーを取り出す。



ピンポーン…



隣りの部屋のインターホンがなる。



『ハイ』。



平瀬わこの声が…その場に響いた。



「私っ、早く開けて~っ」



『…ちょっと待ってね。』