もうすぐ夏とはいえ、夜風は涼やかで頬に心地好かった。
 意外にも、先にすなおな声で詫びたのは安日のほうだった。

「先刻はいきなりあのような仕儀になり、すまなかった。すぐに長になるもの同士、前もって話しておくべきだった」

「いい。どうせそなたが口火を切ること、親父は承知していたのだろう」