仲良く歩く二人は
俺に気づく気配もない。
「花園!」
思いもなしに言葉がでた。
振り向く花園の顔は
なんとも不思議という顔をして…
話したい…
話したい。
伝えたいんだ。 いまなら…
いまなら俺の心をさらけだせる。
俺のすべての思いを伝えられる。
意を決して…呼びつけたんだ。
「こっち…きてよ」
だがあいつは…
俺を無視するかのように
戻って歩きだそうとする。
湧井と一緒に、、、
「っ花園!!」
我を忘れるかのように
俺は叫んだ。
すると花園は立ち止まった。
少しホッとしてる俺がいる。
が…
発せられた言葉は…
あまりにも残酷なものだった。
「なんなの!?いまさら…
いまさらわたしのとこに来ないでよ!
…なんの用がある、の??
貝塚さんといればいいじゃん!!
わたしとの時間なんて…
なくてもいいんでしょ?
もぅ…いいよ。
疲れた。
別れよ…」
"別れよ"…?
ちょっとまてよ…
わけわかんねーよ…
なんだよ時間って…
そんなん…なきゃ困るだろ!?
なにが…なくてもいいんだよ…
そんなことを言いたくても…
言えなくなった。
なんでそんな目で
俺を見るんだよ…
なんでそんな…
泣きそうな顔してんだよ…
それだけいうと花園は
どこかに走っていった…
追いかけたい…
追いかけたいのに…足が動かない…
その場で立ちすくむ俺を
花園がいたところから睨み付ける…
湧井がいた。
「…廉、おまえ…さいてーだぞ」
っ…なんでんなことてめーに
言われなきゃなんねんだよ!
「あいつのこと考えたことあんの?」
…黙れ…
「あいつがいつも!
どんな思いでお前を想ってるのか!
考えたことあんのかよ!!」
「うるっせーよ!!
俺だって…俺だって不安なんだよ!
あいつが…花園が俺のこと
どう思ってるかとか…
聞きたくても聞けねーんだよ!」
「だから貝塚といるのか?
おかしーだろーがよ!!
んなことするくらいなら
弥生のそばにいてやれよ!」
っ…
言い返したくても
湧井の言ってることは
正しいことだらけで
なにもいえない…
「え、あれ?
湧井くん!?と…山里…くん?」
俺の背後から聞こえてきたのは
花園の親友の…
高浜だった…
「なに…してんの?」
「…高浜。頼む、あっちに
弥生が走ってったから」
湧井の言葉で高浜がなにかを
悟ったように花園の向かった方へ
ダッシュで向かっていった。
「…廉。少し話そうぜ」
「っ…あぁ」
俺は湧井にしたがって
近くにあったファミレスに入った。
「…で?なんで廉は
弥生苦しめることしてた?」
頼んだコーヒーをテーブルにおいて
落ち着いた声で話す湧井…
「俺は…ただあいつの気持ちが
知りたかった…」
「それってさ。
弥生に嫉妬してもらいたかった?」
…なんでこいつまで……
皐月とおんなじこと聞いてくんだよ
「…はぁ」
なにも言わない俺に
しびれをきらしたのか
ため息をつく…。
「で、おまえはなんで今日
追いかけてきたんだよ?」
なんで…って…
「お前がおれに嫉妬したんじゃねーの?」
っ!!
な、なんなんだよこいつ!!
「お、図星かよ。…つっても
もう遅いよなーおまえ。」
「っ…、黙れ!」
「弥生は俺がもらうから」
は…?
「じゃ。せいぜい貝塚と
らぶらぶしてれば?」
飲み終えたコーヒーを
机において立ち上がる湧井、
「てっ…めぇ!!
ざっっけんなよ!!?」
その冷静さと言葉に
俺はぶちギレた。
席をたち、目の前で立った
湧井の胸ぐらをつかむ。
「おい、ここではやめろよ
騒ぎになる」
…ちっ、
「…おまえのその態度…腹立つ」
そういって静かに
掴んでいた服をはなした。
「外でるぞ」
言われなくてもでてやるよ!
勘定をすませてファミレスをでる。
「このへんなら人通りも
少ねーからいーだろ」
湧井に黙ってついていくと
なかなか広い路地裏についた。
「…お前…さっきのまじで
いってんのか?」
「廉こそもう少し冷静になれよ」
「っ冷静でいれるわけねーだろ!
人の彼女に手ぇだすやつを目の前に
黙ってるやつがいるかよ!!」
「彼女じゃねぇだろ」
っ!!
「つか元々彼女のような
扱いしてやってなかっただろ!?
こーゆうときだけ彼女よばわりすんのな」
こいつ…
まじでなんなんだよ…
「おれは今だから言う。
お前と弥生が付き合う前から
弥生のことが好きだった」
は…?
唖然とする俺をまえに
湧井の目はたしかな眼差しを
おれに向けている…
「おまえらが両想いっつーのは
みててわかってた。
だからおれは諦めたんだよ。
一度は。
けど…!
おまえが告って付き合い始めた結果が
この有り様だ!!
あいつに…弥生にそんな思いさせる
やつなんかに…
弥生を幸せになんてできるわけねーだろ!」
湧井の想いが…
いまになってやっとわかる…
俺は…
最低だ…。
「…頼むから…もう弥生から
身を引いてくれよ…
あいつに関わんないでやってくれ…」
さっきまでの冷静さがなくなった
湧井のこえは、
すすり泣くかのように小さく
ちからない声だった。
それから俺は…
どう家に帰ったのか覚えてない…。
ただ
頭にあるのは湧井と花園のこと。
いつのまにか朝になっていた。
「っどうすりゃいいんだよ!」
なにか我をなくしたように
ベッドにものを投げつけた。
…こんなことしてる間にも
学校いかなきゃなんねんだよな…
どう花園と接すればいい?
どう話しかければいい?
関わるな…なんて無理に決まってんだろ…
こんなに好きなのに…!