めんどくさくてそいつらを
振り払うことなく階段にむかう。
「あ…皐月」
俺らの前に立ちふさがる皐月は
俺のそばにいた三人の女を
驚くほど怖い顔で睨んだ。
お、前…そんなキャラか!?
まぁそのおかげでみんな
逃げてったけどな
「廉!屋上いくよ!」
理由は…わかってる。
俺は強引にも皐月に連れてかれた。
案の定…状況をきかれる。
「フラれた」
そんなこと言いたくなかった。
現実として認めたくなかった。
でも…仕方がないんだ。
すべては俺が悪いんだから…。
そのとき聞こえてきた声…
「まだ…好きなの…っ!
山里くんが…大好きなの」
太陽の光によって
誰かわからなかった。
けど、、
この声…
花園…っ!
いまの言葉……
「廉、ガンバんな!」
隣で一緒に隠れていた皐月に
押される。
「うわっ!」
ちょ、皐月!?
驚く間もなく俺は
湧井と花園にみつかった。
もうこーなったらどうなってもいい。
いまなら…いまなら───。
「じゃ俺はおいとまするから!」
湧井は立ち去る。
それと同時にきっと皐月も
戻っていったんだろう。
今はもう二人きり。
俺は真っ直ぐに花園をみた。
「花園。さっきの…もう一度話して」
「…なんでもないから
「話せ!」
ビクっ…
っ!やべ…
「あっ…その、ごめん…
怖がらせたくないんだけど…っ、」
「──して。」
「え?」
「山里くんから…話してよ」
……、
俺…から、?
俺の…してきたこと…
うつ向いている花園は
どんな顔をしているのだろう…
怒ってる?泣いてる?
なにもわからない…
「…たし…山里くんのこと…
全然わかんないよ…」
っ…
「でも……
それでも好きなの…」
「花園…
ごめんな…っ
ほんとごめん……」
こんなに…こんなに
悩ませていたなんて…
「俺の話…きいて?」
「っ…うん…っ
昨日は…っごめ…
っ!山、里くん,!? 」
俺は泣き出す花園を
思いきり抱きしめた。
「…このままで……」
「…グスッ…うん…」
「俺は……
花園が好きだ。
ずっとずっと…
だけど…
そのせいで不安もあった。」
花園が…
いつか離れていってしまうんじゃないか…
「…花園の心がわからなかった。
ほんとに…俺でいいのか
俺のこと…好きなのか?
そんなことばっか思ってて…
「っばかぁ…!」
え、?
花園は俺の話の途中で
頭をうずめたまま
俺の胸を殴った。
「なによ、それぇ!
わたしだって…
ずっと…好きだもん!」
「…だってお前…
好きっていってくれねーもん…」
…俺ガキみたいだな…
「……そんな恥ずかしいの…
普段で言えるわけないじゃん…///」
顔はみえないけど…
きっと今の花園は
真っ赤な顔でいるだろう。
「なのに…なのにぃ!!
貝塚さんと……
一緒にいるから…っ」
…それ…
「嫉妬?」
「っちがっ!!///
…わなくないけど…」
俺は…
なにも言わずにもう一度
強く花園を抱きしめる。
「山里くん…?」
「…ごめんな……
俺…嫉妬させたかったのかも
しれない…から…」
「なっ!?」
「ほんとごめん。
けど…やっぱおれ自身も
お前いなきゃ…
やってけなかった」
「…うそつき」
え?
「お昼……わたしが退いたあとも
貝塚さんとあってたんでしょ?」
…あ、、、
…いったほうがいいのか?
「…花園…
俺さ…恥ずいんだけど
…皐月にアドバイスもらってた」
「…は?」
「…お前と…付き合うための…」
「…なに…それ…。
ばかぁ!!!」
「え、?」
「…っ女の子はねぇ!
他の女の子と彼氏が一緒にいるの
見るだけで傷つくんだよ!?」
……。
「…ごめん」
「…もう全部?」
……あ…。
「山里くん?」
「山…
「それ。」
「え?」
「俺のこと…。
廉ってよんでよ」
…ずっと……
嫌だった。
なんで湧井が…
先に名前で呼ばれてるんだ?
なんで名前でよんでるんだ?
「…ねぇ…ひとつ聞いていい?」
「ん?」
「…恭介くんに…
ヤキモチ妬いた?」
…。
「…悪い?」
「…ふふっ…
悪くない。
廉……」
"廉"
ほんとに好きな人に
名前で呼ばれる。
こんなにも心があがるのか?
「ねぇ…廉?
あたしの名前…わかるよね?」
ふいに抱きしめた中から
顔をあげてきた。
…やばい。
「れ……
んっ!?ちょ、」
「ふぅ…っ
れ、廉んっ…!!」
俺は…
初めて…
キスをした。
「んっ…ん…」
甘い…
吸い付くように…
「は……
"弥生"…」
「!!…廉…」
弥生の唇をうばう。
少しずつ開いていく
弥生のくち。
…こんな……こんな気持ち…
知らねぇ。
心臓がどくどくしすぎて
おかしくなる…。
静かな空気に
小さなリップ音がなる。