「…花園?」
え、
5階の上にある
屋上の階段をくだり、
そのまま1階の階段の裏…
つまり暗いところに避難していたわたし。
に話しかけてきたのは
同じクラスの…
「湧井…くん…?」
湧井 恭介《わくい きょうすけ》
クラスの人気者で
とても爽やかな男の子だ。
「なに、してんの
こんな地味~なとこで」
「…何でもない…よ」
しゃがみこんでたわたしを
のぞきこむようにして
訊ねてくる湧井くん…。
「ん?あれ。花園、今日は…
廉と食べねーの?」
…痛いとこつかないでほしいな。
「…関係ないでしょ?」
「ね!まだ食べてねーなら
おれと食べない?
ほら中庭いこーぜ!」
「え、ちょ!」
湧井くんは勝手にきめると
わたしを立ち上がらせて
走り出した。
「さて、食べるか!」
連れてこられたのは
中庭のちょっと奥にいった
木の茂みだった。
「なにげここいーだろ?
涼しいしきもちーし」
…たしかに…まぁ
気持ちいいけど…
なんでこんなことに!?
とか思いつつも
弁当箱をひらくわたし。
「な。聞いていい?
なんで花園さ、貝塚と廉のこと
ほってんの?
なんとも思わねーの?」
おにぎりにかぶりつこうとした手が止まる。
「え、?」
「嫌じゃねーの?」
嫌じゃない?
「そんなわけ…ないじゃんっ…」
辛いよ…?
「じゃあなんで……
!」
なんで、
その次の言葉をかける前に
湧井くんが目を見開いて
こっちをみた。
「花、園…」
「え、」
わたしの名前をよぶと
いつのまにか流れていた涙を
手で拭ってくれた…
「あ、れ?あはっ…
わたしいつのまにか泣いてたんだ」
「……無理、すんなよ」
その一言で…
無理やり作っていた笑顔が
泣き顔にかわって
一気に涙が溢れだした。
「ふっ…ぅえ…っ
ほんとっ…は、すごく嫌だよ…
なん、っで…グスッ
わたしじゃな、くて…
貝塚さんなの…、?」
「……うん…辛かったなぁ…」
「うん……!?
えっ…湧井、く ん!?」
湧井くんは優しくわたしを抱き締めた。
「ちょ…、」
「…んな辛そうにしてる花園、
黙ってみてる方が辛い」
っ……
「なぁ。
おれに考えあんだけど…
やってみる?」
その日、
金曜日がすぎて
今日、月曜日から
湧井くんのいった考えを実行する。
わたしが変わる。
「はよっ弥生!」
「若菜っ♪おはよー」
教室にはいって一番に
若菜を見つけた。
山里くん…は
まだきてないか。
ってもう関係ないけど。
「弥生!」
あっ、!
「え?いま…」
驚いてる若菜をおいて
「恭介くんっおはよー」
湧井く…恭介くんはわたしたちの
もとへかけよってきた。
「え、えぇ!?弥生!?」
あははっ若菜が超テンパってます。
まぁそりゃそうか。
いきなりそこまで仲良くなかった二人が
呼び捨てしあってるんだもんね
てことで若菜に二人で事情を説明した。
わたしの話をききおわった若菜は
「ほん…とに?
弥生…。」
「本気だよ、大丈夫。
若菜と恭介くんがいるし」
わたしがそういうと
二人は優しく微笑んでくれた
「それに…自分自身も
変わりたいって思ってたしね」
「…そっか」
わたしは
今日から山里くんと関わらない。
ちがう。
山里くんの存在を……
わたしのなかから消すんだ。