好き…だけどつらいよ…




少しぎくしゃくした雰囲気に
なっちゃったから
あたしは早々と階段にむかった。





そのときだった。



「廉くーーん」



…は?



そんな甘い声があたしの
耳にきこえてきた。


花園さんの声ではない。


あたしはのぼった階段をおりて
声のもとをみた。



「…なに?あの子たち…」


廉にまとわりつく三人の
女の子。




そして

そんな姿をつらそうにみつめる
花園さんの姿があった。


「なんで…?
昨日…すべて話して…

もとに戻れたんでしょ…?」



いまあたしの瞳にうつる
この現場。

まったくの理解不能。



あたしはこっちにむかってくる
廉をとめた。

まわりの女子をこれでもかっ!
てくらい睨み付けて。


もちろんその子たちは
すぐさま立ち退いた。


あーあ。あたしの
お嬢キャラ崩壊!

ってもうここまできたら
そんなことどうでもいいわ!


「廉!ちょっと屋上いくよ!」


強引に廉を連れていくあたし。

廉はなんの反抗も反応も
しなかった。



…なにかおかしい。



そう思いつつも
屋上のドアを開けた。



「廉?さっきのどういうこと?」


二人になった瞬間にいう。

「…別に」

あたしと目をあわせることなく
いい放つ廉の表情がわからない。


「…廉? 」


「…昨日、




フラれたから」



…は、?



「なに、いってんの?

そんな冗談…「冗談だったら

いーよな!!」


っ!


「…くそ…っ…
俺が…悪いんだから

しかたねーんだよ…」


「…廉…なにがあったの?」


しゃがみこむ廉のとなりに
静かに座り込む。



「…伝えれなかった。」

……

「俺の気持ち…とか…

いままでのこととか…


全部…全部、、伝える前に



フラれた。」





かける言葉がなにも
みつからない。


あたしは小さく
消えそうになっている
廉を見守ることしかできなかった。





そんなときだった。





ギィ────────




っ!



あたしたちは咄嗟に
ドアのすみにかくれた。





…誰?


逆光で二人いることしか
わからない。





「……だったひとだもん!」











「……花園…?」


自分のひざに顔を
うめていた廉が少し顔をあげた。



「花園の、、声がする。」


…廉…




「逃げんなよ!」


あ、、



「っ湧井…か」



二人の話し声はなかなか
聞こえてこない。


けど二人の叫ぶ声は
聞こえてきた。





「そんな…お互い話してもねーで
別れるとかいってんじゃねーよ!!」



っ…!

これ…廉と花園さんの

話…?




「もう一度…ふたりで話してみろよ…」




あたしは横に立っている
廉をみた。



「っ…湧井……」






湧井くんのとなりで
頭をさげながら…泣く花園さん。






「まだ…好きなの…っ!

山里くんが…大好きなの…」





……



その告白は


あたしたち二人にもはっきりと
聞こえた。





…廉。


ここで伝えなくて
なにが伝わるの?




あたしはやわらかく
廉に笑顔をみせて


軽く廉のことを押した。







「うわっ!?」



「廉!今度こそちゃんと
伝えなよ!」




ほんとに今度こそ…

これでおしまいだから。



手間かけさせすぎなのよ!


不器用な二人ね…まったく。







大好きだったよ…

廉。



花園に…フラれた次の日。


俺の回りにはなぜか
女がついてきた。



「廉くーーん」

…なんだ?こいつら…


「ねぇねぇ廉くん!」

あ、

「おー!遥!どした?」


遥は俺のいとこ。


あんまり会うことがなくて
ひさびさにみた。

「ねぇ、花園さん?って子と
別れたってほんと?
なんか広まってるよ」


…なんで広まってんだよ。

つーかそれが原因でこれか!


うぜぇ…









めんどくさくてそいつらを
振り払うことなく階段にむかう。




「あ…皐月」


俺らの前に立ちふさがる皐月は
俺のそばにいた三人の女を
驚くほど怖い顔で睨んだ。



お、前…そんなキャラか!?


まぁそのおかげでみんな
逃げてったけどな


「廉!屋上いくよ!」


理由は…わかってる。


俺は強引にも皐月に連れてかれた。





案の定…状況をきかれる。



「フラれた」


そんなこと言いたくなかった。

現実として認めたくなかった。



でも…仕方がないんだ。


すべては俺が悪いんだから…。





そのとき聞こえてきた声…





「まだ…好きなの…っ!

山里くんが…大好きなの」




太陽の光によって
誰かわからなかった。


けど、、


この声…



花園…っ!



いまの言葉……










「廉、ガンバんな!」

隣で一緒に隠れていた皐月に
押される。


「うわっ!」



ちょ、皐月!?



驚く間もなく俺は
湧井と花園にみつかった。



もうこーなったらどうなってもいい。



いまなら…いまなら───。



「じゃ俺はおいとまするから!」


湧井は立ち去る。

それと同時にきっと皐月も
戻っていったんだろう。



今はもう二人きり。



俺は真っ直ぐに花園をみた。


「花園。さっきの…もう一度話して」

「…なんでもないから

「話せ!」


ビクっ…

っ!やべ…


「あっ…その、ごめん…
怖がらせたくないんだけど…っ、」


「──して。」



「え?」

「山里くんから…話してよ」


……、

俺…から、?

俺の…してきたこと…



うつ向いている花園は
どんな顔をしているのだろう…


怒ってる?泣いてる?



なにもわからない…