好き…だけどつらいよ…




山里くんのなかに…


少しでもわたしを好きという思いは…


なかったのかな?








「ねぇねぇ廉くん!」

「おー、遥!どしたー?」



そんな小さな願いも…


今聞こえてきた会話によって
もろく崩れ去った。。。




初めてきく名前…



その子も名前で呼ぶんだね。




わたしのことは付き合っていたときも

付き合う前も…ずっと苗字だった…。




そんなところにも…


あなたの

別れよう


の意味がこめられてたのかな?


気づくのが遅くてごめんね。








「やーよーい!もう行くよ!」


完全に落ち込み気味のわたしを
力ずくで鞄を引っ張ってくれる若菜。


「もう…そんな落ち込まないのー!
新しい人さがそ?」


若菜はそういってくれるけど…

わたしの頭はまだ山里くんでいっぱいだ。



「弥生」


呼ばれて振り返る。


「あ、、












恭介くん…」




「はよ」

「お、はよ…」


昨日のことがあって
少し気まずい…、、


「昨日、大丈夫だったか?」

え、

「あれからどうした?」


「あ「弥生はあたしが連れて帰ったよ」

言いづらいわたしを察したのか
若菜がフォローしてくれた。


「そか、なら大丈夫だな」


…やっぱり…やさしい…。


わたしの心配ばかり…。




「ん?どした?弥生…
ぼけーっとして…」

「ふぇ!?あ、なんでもないよ!」










「弥生、ちょっといい?」

「え?」

教室いかないの?かなぁ…?


「あ、じゃああたし先教室いくね!
ふたりとも鞄もっていってあげる」


「あ、若菜ありがと」
「オレは大丈夫だからいっていーよ」

りょうかいっ
と片手をおでこにつけて足早に
教室にむかう若菜をまえに、

恭介くんとふたりになる。



「どうしたの?いきなり…」

「ん、場所変えていい?ここ
人多いし…」

…たしかに。

ここ廊下だもんね

「じゃ屋上いこ?」

「おう」




話って…なんだろ?


そんな疑惑のなか屋上にのぼる。



ギィ─────



扉を開けると一気に
秋の涼しさにかこまれる。


「んで?話ってなんだった?」


「あー。うん、昨日のこと」




……やっぱりか。



なんとなく予感はしてた。



「昨日のこと?もう山里くんとは
終わっただけだよ?
そのほかになんもないし!」

わたしは一人、屋上を歩いて
フェンスに指をかけて景色をみわたす…


「なんもないならさ。

なんでそんな悲しい顔になんの?


なんで昨日別れるとき…
あんな辛い顔してたの?」


わたしのそばにきて
景色をみていたわたしを横から見つめる。




「…別に……あれはカッとなっただけ」

「今は?」


今、は……



「今は…っ…て?」

「…はぁ。

さっきさ。廉が女の子に囲まれてるの
見てたよね?」

っ!

「あのときどう思った?ってこと」


「…どうって……
わたしのことはほんとに
どうでもよかったんだ!!って!

それしかないよ!」

「ほんとにそれだけ?」


っなにそれ…


遠回しにいわないでよ…


「ほんとはさ。その子たちに
"嫉妬"、してたんじゃないの?」




嫉妬…、?


「好きだから。


ちがう?」



好きだから…?


ちがう。ちがうよ!

「山里くんはっ…!

好きだった人

だもん!!」



「…それ本気なこたえ?」

「本気…もなにもないよ」





「じゃあさ?












なんで今泣いてるの?」







え?





そう言われて初めて気づく──。


わたしの顔には涙がつたっていた…。




「あ、れ…なんでだろ…?」


「弥生!!

逃げるなよ!」


っ!!

「たしかに…あいつはひどい。

けど、、あいつにもなんか理由(わけ)が
あんじゃねーの?

そんな…お互い話してもねーで
別れるとかいってんじゃねーよ!!」


…っ……

「もう一度…ふたりで話してみろよ…」



恭介くんのことばが…

胸にしみる。



「っうん…うん…。

わたしっ…まだ…好きなの…っ!


山里くんが…大好きなの…」









「う、わっ!!?」









え、













誰かの声がした。




ドアのうしろの影から…





「……花園、それ…まじなこと?」








う、そ…



どうして…?






「じゃ。オレはここでおいとまするな!





弥生。がんばれよ」



っ…



なんで…、



なんで…





山里くんがいるの…?


「……」

真っ直ぐに見つめられるわたしは

山里くんから目をそらす。



「花園。さっきの…もう一度話して」

「…なんでもないから」

「話せ!」


ビクっ…



「あっ…その、ごめん…
怖がらせたくないんだけど…っ、」


「──して。」


「え?」

「山里くんから…話してよ」


あなたの…話がききたい。



ほんとうの理由。