「お。助手席はだめな?
彼女専門の席だから」
「お兄ぃ彼女いたことないくせに
気取るなー!!」
…え!
「いっくん彼女なし!?」
「あ、れ弥生知らなかった?」
知るわけないよー!
てゆか…こんなかっこいい人に
彼女いないとか…世の中どなってんの!?
「ん?なになにー?弥生ちゃん
俺の彼女になってくれんの?」
「「なりません!」」
「ちょ…二人していうなよー!」
わたしもびっくりして
若菜と笑ってしまった。
「お兄ぃ!んなこといいから
早くはしらせてっ♪」
ほいほーい
と若菜にしたがって車のエンジンを
かけたあと音楽をならした。
あっ!
この曲…
「弥生ちゃんの好きな歌だよな?」
そうだ…
この前あったときに話した…
覚えててくれたんだ!
「さぁーて!学校目指してしゅっぱーーつ!」
ちょ、、
「お兄ぃ!あたしらそんなガキんちょ
じゃないんだけどー」
ついつい二人の会話に笑いがこぼれる。
「おう、あんま近くだと金持ちのぼんぼんだと
思われるからここでおろすぞ!」
「いまどきそんなん誰も思わないっての!」
ほんと…若菜のツッコミ鋭すぎて楽しいな
「弥生ちゃん、また遊びにおいでな」
「はい!もちろんです」
そういうとそくささとドアを閉めた。
信号で止まったままおりたから
いっくんは前を向いたままミラー越しに
手をふってくれた。
「いこっか」
「うん」
下駄箱までふたりであるく…
が…
そこで会いたくない人にあってしまった。。。
「貝塚さん…」
透き通るほど綺麗で大きな
真っ黒い瞳でみつめられる…
「おはよ、花園さん」
「え、あ、、はよ」
挨拶をするとスタスタと階段を
のぼっていってしまった。
「弥生、なにも考えないの!」
「うん。ありがと」
「廉くーーん」
「山里くーん!」
え、?
廉……くん?
未だわたしのまわりに
山里くんを"廉くん"と呼ぶ人はいない…
はずだったのに
声がした方をむくと
そこにみたものは
3人の女の子に囲まれている
山里くんだった。
「なにあれ!昨日の今日であれ!?
まじでありえない…」
っ…どうして…?
そんなにも…
わたしと別れて嬉しかったの?
そんなにも…
他の子たちといたかった?
毎朝…一緒に登校してた貝塚さんは?
わたしと別れるために利用してた…?
こんな考えしか思いつかない…。
でも…じゃあどうして……昨日は…
辛そうな顔をみせたの…?
山里くんのなかに…
少しでもわたしを好きという思いは…
なかったのかな?
「ねぇねぇ廉くん!」
「おー、遥!どしたー?」
そんな小さな願いも…
今聞こえてきた会話によって
もろく崩れ去った。。。
初めてきく名前…
その子も名前で呼ぶんだね。
わたしのことは付き合っていたときも
付き合う前も…ずっと苗字だった…。
そんなところにも…
あなたの
別れよう
の意味がこめられてたのかな?
気づくのが遅くてごめんね。
「やーよーい!もう行くよ!」
完全に落ち込み気味のわたしを
力ずくで鞄を引っ張ってくれる若菜。
「もう…そんな落ち込まないのー!
新しい人さがそ?」
若菜はそういってくれるけど…
わたしの頭はまだ山里くんでいっぱいだ。
「弥生」
呼ばれて振り返る。
「あ、、
恭介くん…」
「はよ」
「お、はよ…」
昨日のことがあって
少し気まずい…、、
「昨日、大丈夫だったか?」
え、
「あれからどうした?」
「あ「弥生はあたしが連れて帰ったよ」
言いづらいわたしを察したのか
若菜がフォローしてくれた。
「そか、なら大丈夫だな」
…やっぱり…やさしい…。
わたしの心配ばかり…。
「ん?どした?弥生…
ぼけーっとして…」
「ふぇ!?あ、なんでもないよ!」
「弥生、ちょっといい?」
「え?」
教室いかないの?かなぁ…?
「あ、じゃああたし先教室いくね!
ふたりとも鞄もっていってあげる」
「あ、若菜ありがと」
「オレは大丈夫だからいっていーよ」
りょうかいっ
と片手をおでこにつけて足早に
教室にむかう若菜をまえに、
恭介くんとふたりになる。
「どうしたの?いきなり…」
「ん、場所変えていい?ここ
人多いし…」
…たしかに。
ここ廊下だもんね
「じゃ屋上いこ?」
「おう」
話って…なんだろ?
そんな疑惑のなか屋上にのぼる。
ギィ─────
扉を開けると一気に
秋の涼しさにかこまれる。
「んで?話ってなんだった?」
「あー。うん、昨日のこと」
……やっぱりか。
なんとなく予感はしてた。
「昨日のこと?もう山里くんとは
終わっただけだよ?
そのほかになんもないし!」
わたしは一人、屋上を歩いて
フェンスに指をかけて景色をみわたす…
「なんもないならさ。
なんでそんな悲しい顔になんの?
なんで昨日別れるとき…
あんな辛い顔してたの?」
わたしのそばにきて
景色をみていたわたしを横から見つめる。
「…別に……あれはカッとなっただけ」
「今は?」
今、は……