なかなか顔をあげない里麻。


私も「顔あげて?」と言いたいけど、口が言うことをきかなかった。



教室の生ぬるい空気が、私の体を包み込む。

懐かしい感触に思えた。



「あの、さ。里麻」



喉からやっと声がでた。

その声に驚いたのか、里麻の肩がビクンと揺れた。



「里麻、もう一回海くんのこと好きになってくれる?」

「えっ」

「好きなんでしょ。あきらめないでよ」



顔をあげた里麻の目は、赤く充血していた。