「どした？ 元気ないけど」



隣には、優しい伊月がいる。


今日は雨だから、サッカー部は珍しく休み。


真面目な伊月は「雨の日は校舎内で筋トレとかできるだろ」とぼやいている。

そんなことを思いながらも、今、こうやって私と帰り道を一緒に歩いてくれてる。



「う……ううん。何でもないよ」

「なんかあったんだ」

「違うよっ」

「違ってない。ウソついてるだろ。涼はウソつくと舌がうまくまわらなくなるから」



お見通しだった。

私はしょんぼりうなだれる。



だって、流星が。


――キス。してきたんだよ？


伊月がそれきいたら、悲しむでしょ？