「っ!?」

彼女に突き飛ばされた体は、思った以上に遠くまで飛ばされた。

背中から地面に落ち、僕は息が一瞬出来なくなった。

「ぐっ……!」

彼女を見ると、彼女は僕が落とした包丁を拾い上げていた。

「ごめんなさい……私、貴方を……優紀を愛してる。だから……生きて欲しいの」

彼女は涙を流しながら僕に薄く微笑んで、包丁の刃を自分の胸に向けた。

「っ! 優紀! ダメだ!!」

僕はそれを見て叫んでいた。

彼女は、死のうというのか?

僕の為に、やはり死のうというのか!?

なんでだ! なんでそれしか選ばないんだ!

「なんで僕だけ生きなきゃいけないんだよ! 短くても良いじゃないか! 幸せに生きていければそれで良いじゃないか!!」

僕は彼女に必死に叫んでいた。

一緒にいられるだけで、それだけで良いのに。

何故、それさえも望ませてくれないんだ。

「……私は、貴方に生きて幸せになって欲しいの」

彼女は悲しそうに笑顔で泣いてる。

「バカ! 僕に優紀以外の誰と幸せになれって言うんだよ!? 『美夜綉』が自分しか愛せ無かったように、僕も優紀しか愛せないんだよ!!」
僕は彼女に一歩近付いた。

「嘘よ。『美夜綉』とは、私と貴方は違う。『同じ』じゃないわ。『同じだった』のよ……だから、大丈夫」

「大丈夫じゃない! そうだ、『美夜綉』とは僕たちは違う! だから!」

僕はまた一歩近付いた。

彼女は顔を歪ませて、来ないでと小さく呟いた。

「だから、僕は優紀と生きていたいんだよ! どんなに短い時間だとしても、僕は優紀と愛し合って生きて行きたいんだよ!!」

もう止まらない。