「発声からやるだろ?」


「もち。

今ノド傷めたら、シャレにならないもん」


「だよなぁ。じゃ、始めるか」



階段を昇ったり降りたりしたから、体は温まってる。


涼介がピッチパイプをくわえ、息を吹きこむ。


本当はピアノがいいが、持ち歩きはできない。


代わりは音叉もあるし、携帯の着信音作曲機能もあるが。


涼介は、小さいし、何となく可愛いという理由で、ピッチパイプを好んだ。


ハミングで出す声の高さを確認する。


そして、発声練習が始まった。