「バカだね……」



ちぃは、くしゃりと笑った。



「本当に、食べちゃいたい」


「……どこを?」


「全部」



ちぃはそう言うと、壁にもたれたあたしに、自分の体を強く押し付けた。


香水の香りに、微かに汗のにおいが混じっている。


これが、ちぃの匂いだ。



「……いいよ」


「バカ。簡単に承諾するんじゃないの」


「いいよ。そんなことで、ちぃが楽になるなら」



いいんだよ。


本当のバカじゃないから、なんとなく意味わかったよ。


あたしの体なんか、どうでもいいよ。


それで、ちぃの心が守れるなら。



そう思ってはいても、身体は正直に震えだす。


緊張と、恥ずかしさで。


うつむくと、ちぃはふっと体を離した。



「……ダメだってば……抵抗してよ……」


「ちぃ……」


「俺は、ひなたを汚したくない。

俺なんかが汚しちゃダメなんだ」