「泣かないで、ひなた」



ちぃの優しい声がした。



「泣いてない」


「でも、泣きそうな顔」



困ったように笑うちぃの、眉尻が下がる。



「違うんだよ。

俺が自分で、離れたんだ。

家族といないほうが、安定してるんだよ、これでも」


「そんな……」


「お前、家族と仲いいの?」


「……うちはママだけだけど、仲はいいよ。

演歌歌手で営業まわってるから、あまり会えないけど」


「そう……じゃあ、わかんないかもね」



ずしりと。


ちぃの言葉が、胸に重くのしかかった。


お前にはわからない。


そう、言われたんだ……。



「いいんだよ。ひなたは、わからないでいい。

わかってほしくなんかない。

ひなたが俺みたいになるくらいなら、

そのままでいてくれた方がいい」



ちぃはあたしの心を見透かしたのか、そんな言葉をかけて。


頭を優しく、優しくなでてくれた。