「……だってひなた、いつまでも『千影くん』ってさー」


「はい?」


「俺だけお前のこと呼び捨てで、寂しいな」



……ちょっと待って。


何でも良いって言わなかった?



「おかげで長島に、俺の正体ばれちゃったじゃん」


「……!」


「何かあだ名、考えて」



そうか。


千影って、あまりない名前だもんね。


知ってる人には、すぐばれちゃうのか……。



「……ちか、ち……

ちぃ?

ちぃで、いい?」



我ながら、センスの欠片もない。


『ちぃ』って……小さい女の子みたい。


でも、千影くんは嬉しそうにうなずいた。



「それでいい」



そして……


本当にたった一瞬だけ、


寂しそうな目で空を見つめた。