心配そうにのぞきこむ千影くんの目は、優しくて。
あたしは少し、安心した。
「ううん、違うよ。
家でやっちゃったの」
「へえ……気をつけなよ、女優の手なんだから」
「そんな、たいしたことないよ。
ほら、もうふさがってるんじゃない?」
ぺ、と絆創膏をはがしてみる。
薄い傷の周りで、ふやけて白い皮膚がしわしわになっていた。
「ほら、大丈夫」
「ほんとだ。
血ぃ見るとスゲー痛い気がするけど、すぐ治るもんだよね」
「そうそう!」
ふざけてブラブラ手をふる。
「あうっ」
すると、あろうことかホケミパンが入っていたビニール袋の口に、
傷口が直撃した。
「じ、地味に痛いっす……」
「あーあ、バカだなぁ」
千影くんは呆れたように言うと、再度あたしの手をとって……
その形の良い唇を近づけた。