「じゃあ明日、お互いに頑張ろうな」
暗くなった校門で、涼介は笑って言った。
「うん。じゃあね!」
あたしも笑いかえし、帰ろうと涼介に背を向けた。
しかし、すぐ、その背に声が飛んでくる。
「……ひなた!」
私は振り返る。
そこには、女たらしなタレ目の涼介が、真剣な顔をして立っていた。
「なに?」
「あの……あのさ。
明日のオーディションで……俺が主役、取れたらさ」
「うん」
「取れたら……。
俺と、付き合って」
春の夜風が、涼介のワックスではねた髪を揺らした。
そして、あたしの、ウェーブがかかった黒くて長い髪も。
「……考えとく」
「…………うん、考えといて」
じゃ、と涼介は背を向け、走って行ってしまった。