車が発進したと同時に、隣に座っている女の人が名刺を差し出してくる。


「申し遅れました。わたくし、こういうものです」


警戒しながらもあたしはその名刺を受け取った。


《RaxY芸能事務所
社長秘書 神崎 小百合》


その名刺にはそう書いてある。


RaxY芸能事務所って……


もしかして………スカウトとか……♪?


んなわけないか……。
今まで十何年も生きてきててスカウトなんかされたことないし…っ。

だったら何……!?
芸能事務所と見せかけて本当はヤクザだったりして……っ。
やっぱりあたし殺されちゃうの……!?


「ぷっ……」


あたしが1人でアタフタしていると隣で女の人が吹き出した。


『……?』

「すみません。面白い方だなぁと思いまして」


女の人はそう言って笑った。