「キョウヤくんの話すコウヤくんは、キョウヤくんの感情のフィルターがかかっていて、全然ナマの人間に思えなくて、そのくせすごく魅力的でした。

 それを聞いてるうちにあたし、ものすごく本人に会ってみたくなりましたんです。

 知ってました?

 あたし、去年ずっと、うちの高校に出入りしてたんですよ。

 校舎に入り込んで、コウヤくんウォッチング。

 孝ちゃん先生に、めちゃくちゃ呆れられましたけど」

「ストーカーかよ」

 俺のツッコミを無視して、穂波はうっとりと目を細める。

「はじめてコウヤくんを見たときは感動しました。

 ああ、これがキョウヤくんがなりたかった『自分の半分』なんだって」

 ――馨也がなりたかった『半分』が――俺?

 穂波が、俺を見上げて、微笑んでいる。