「伊藤くん、伊藤くん。今日の放課後、話したいことがあるから、教室に残ってもらっててもいいですか?」
ちょっと首を傾げて上目遣いで顔を赤くしながら小さな声で言う。
「あ、あ、あぁ…。うん、別にいいよ。」
あーあ、そんなタコみたいに顔赤くしちゃって。
ばっかだなー。
「ちょ、結良ちゃん!!何今の可愛い仕草!!」
だから、おまえは声が大きいんだって。
「え?何のこと?」
普通の声でそうとぼけたあとに、
こころちゃん、梨里ちゃん、馬鹿だけに聞こえるように言う。
「あんなの計算に決まってんじゃん。あんなことして惚れない男いたら見てみたいよ。」
相変わらず外人みたいなこころちゃんは、声を殺して笑う。
最近、ピアスの穴を開けたらしい梨里ちゃんは、我慢できずに吹き出す。
私、別に笑うことではないと思うんだけど。