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「ここ?」
「うん。そうだよ。」
斉藤くんの車で家に到着。
「あー、イメージ通りやわー。」
「寄っていく?」
「いや、遠慮しとくわ。」
遠慮すると言ったくせに、車から出てきたバカ。
「なに。」
小さな声で問いかけると前方を顎でしゃくった。
見れば、お母様が家からこっちに向かって歩いているところだった。
藤原家のしきたりにより、お母様は着物だ。
高校生から浴衣、それまでは甚平。
25を越えれば着物になる。
「お母様。ただいま戻りました。」
「結良、こちらの方は? 」
私の挨拶を無視して始まった、お母様とバカの会話が終わると、バカは帰っていった。