「平岡、何かおごってー!!」
「無理」
今日は土曜日。
午前中の部活が終わって、彩と自販機でジュースを買っていると、タカが走ってきた。
「けちー」
「ケチでけっこう」
今年入学した妹同士が同じクラスだったり、タカも浩太が通うサッカーチームのOBだったりしたこともあって、あたしとタカはすぐに仲良くなった。
タカはあたしのことを“平岡”って呼ぶけど、あたしはいつのまにか“白崎”から“タカ”って名前で呼ぶようになってた。
「俺、アクエリ♪」
タカはあたしがお金を入れると、横から腕を伸ばして、すばやく自販機のボタンを押した。
出てきたのは、あたしが欲しかったミネラルウォーターではなく、アクエリ。
「最悪。10倍返しだから!!」
「またいつかなぁ~」
あたしがアクエリを投げつけると、タカはそれを上手くキャッシして走っていった。