「・・・ありがとう」


あたしは大谷にかけよると、小さな声でそう言った。



「・・なんか、気持ち悪いな」

「な・・ッ、あんたが言えって言ったんでしょ!?」

「俺に言われてくらいで素直にねぇ・・珍しい」

「はぁ!?」

「明日は雨どころの話じゃねーな。雪・・いや、槍とか降ってくるかも」


そう言って、大谷はニヤッと笑った。

いつものいたずらっぽい笑顔。



大谷が好きと気付いてから、

どんなにささいな事でも特別に感じてしまう。



少女マンガの主人公の女の子の気持ちが、今なら理解できる気がする。



ただ・・

気になっているのは、裕香のこと。



文化祭準備に入ってから、一言も口をきいていない。