「お、仕事してんじゃん。実行委員」
文化祭の会場で机を運んでいたあたしに、クラスの壁新聞を抱えた大谷が声をかけてきた。
「あんたもじゃん。珍しい」
「お前が言うな!」
いつもの会話だけど、内心、あたしはドキドキしっぱなし。
そんなあたしにはおかまいなしで、前をスタスタと歩く大谷。
「―・・あ!」
急に、大谷が妙な声を出して立ち止まった。
「・・なに?」
「それ、貸せよ」
「え、ちょっと・・!?」
大谷は持っていた新聞をそのへんに置くと、あたしが持っていた机を取り上げた。
「お前、一応女だし」
そう言ってあたしに新聞を拾うよう促した。
「・・“一応”って何よ?」
嬉しかった。
でも、あたしは素直にそんなこと言える性格じゃない。
「なんだよ、素直に“ありがとう”くらい言えねぇの?」
そう言うと、大谷は机を抱えながら階段を上りはじめた。
もしかして・・
階段があるから代わってくれたの?