『完全下校、30分前です。各クラス、教室の片づけを行ってください』
放送部員ではない、おじさんの声が校内に流れた。
あたしと大谷も、会話をやめてスピーカーを見上げる。
「今のおっさん、誰?爽やかじゃねぇなー」
大谷は笑いながら言う。
「・・・そろそろ戻る?」
あたしはそんな大谷を少し見下ろして言った。
「そーだな。片付けだけでもやるか」
「だね」
そう言ってあたしたちは立ち上がり、教室に向かって歩き出した。
「おばさんにサボってたのバレたらどうするよ?」
少し前を歩いていた大谷が振り返った。
「知らないよ。誘ったのあんただもん」
「はぁ?お前も共犯だし」
そう言いながら、騒がしい教室の前で立ち止まる。
「絶対共犯だからな!」
そう言って、大谷は教室のドアを開けた。
「大谷くん、平岡さん、終わったんですか?」
あたしたちに気付いたおばさんが言った。
どうやら、サボったのはバレてないみたい。
「「・・・セーフ」」
あたしと大谷は、目を合わせて笑った。