振り返ると、また大谷が立っていた。



「・・・何、してんの?」


「ちょっと来いよ」


大谷は手に持っていたノートを机に置くと、あたしの手を引いて歩き出した。


無意識に、繋がれた手・・・



「ちょっと、大谷!?」


思わず、大きな声を出してしまった。


「ばか!授業中!!」


そう言われて、慌てて口を押さえる。


「ねぇ、どこ行くの?授業は!?」


少し小声で話しかけてみたけど、大谷は答えてくれない。



廊下の突き当たりにある非常階段をひたすら上って、大谷が立ち止まったのは屋上への階段の踊り場。

屋上にはもちろん鍵がかかっているから、こんなところに来る生徒なんていないだろう。


「・・何、ココ」

「階段」

「わかってるよ。そんなこと」

「静かだろ。人とか来ねーし、俺の場所。お前だけには教えてやるよ」


大谷はそう言って伸びをした。


「・・なんで?」


“お前だけには”
ってどうゆう意味??


「うるせーな。お前、最近ため息多いんだよ!こっちまでテンション下がるっつーの。だから・・ッ・・・」


そこまで言って、大谷は目をそらした。


気のせいかな・・

少しだけ、顔が赤い。



繋いだ手はいつのまにか離れていた。


それでも、あたしの手は

まだ少し温かかった・・・