「―・・麻耶ってさ、大谷のこと好きなの?」


裕香があたしに唐突な質問をぶつけてきたのは、次の日の朝。


「何言ってんの?」


平然をよそおって答える。

正直、少し動揺した。


「だって・・・」


明らかに不機嫌な裕香の声。

“最近、仲いいじゃん”

次の出てくる言葉は、おそらくコレだそう。


「違うから。席が隣になったのに、いつまでも喧嘩ばっかりしてるわけにもいかないでしょ?」


裕香が言葉の続きを言う前に、あたしは否定した。


「そうだけど・・・」


1時間目は移動教室で、気付けば教室に残っているのはあたしと裕香の2人だけ。

彩は、さっきトイレに行くといって先に教室を出て行った。


「ホントに、好きじゃないから・・・」


人を好きになった経験のないあたしにとって、“好き”という感情がどうゆうものなのかイマイチ分からない。


確かに、前よりは大谷と普通に話せるようになった。
喧嘩も少なくなった。

だけど、好きなわけではない。

もし、あたしが大谷を好きになったとしても、親友の好きな人に思いを告げようなんて思わない。



こんな中途半端な気持ちは、誰に言わずに、あたしが胸の中にしまっておけばいい。


そして、いつか消えてしまえばいい・・・