「麻耶ぁ!帰ろう!!」
大谷と一緒に昇降口を出ると、裕香がとびついてきた。
裕香の後ろには彩もいる。
「お前、またコイツにくっついてんのかよ」
そんな裕香を見て、大谷は少し呆れ顔で言った。
「うるさいなぁ。友達にくっついて何が悪いのよぉ」
裕香はあたにの腕に、自分の腕を絡ませながら言った。
少しふくれっ面だけど、“好きな人”と話すときの顔だ。
「ま、いいけど。じゃーな」
大谷は、ヒラヒラと手を振って歩いて行った。
「うん、バイバイ」
あたしも小さく手を振った。
「なんかさぁ~・・最近、仲いいよね」
歩きながら、裕香が言った。
「何が。てか、誰と誰が?」
“仲いいよね”
この意味がイマイチ分からなかったあたしは、裕香に聞き返した。
「麻耶と大谷」
「はぁ!?」
さらに意味の分からない裕香の発言に、あたしは思わず大きな声を出した。
「確かに。なんかさ、前と違うよね」
「彩まで・・・そんなことないから」
確かに、前よりは喧嘩も少なくなったかもしれない。
でもそれは、別に深い意味なんてなくて・・・
「そぉ??」
彩も裕香も、納得のいかない様子だった。
裕香は、あたしにまだ言いたいことがあるようだ。
それでも、なぜか口を開かなかった。
その後あたしたちは、いつもの分かれ道までほぼ無言で帰った。