_ キーン コーン _



ほぼ無言で作業をしていたあたしたち。

気付けば、完全下校10分前のチャイムが鳴っていた。



「もうこんな時間かぁ~」


大谷が手を止めて大きく伸びをする。


「あたし終わったから。コレ、職員室に持って行ってくる」


そう言って、あたしは席を立った。


「あ、待てよ。俺も行く」


大谷も、そう言って立ち上がった。


「終わったの?」


あたしは荷物にかけながら聞いた。


「おう。それ貸せよ、持つから」


カバンやバッシュであたしの手がふさがっていることに気付いたのか、大谷が言った。


「あ、うん」


パンフレットを手渡したとき、ほんの少し指先が触れた。



―・・バサッ


「・・・きゃっ!」


あたしは反射的に手を引っ込め、持っていた荷物を落としてしまった。


「何やってんの・・女みてぇな声出すなよ」


大谷が床に散らばったパンフレットを拾いながら言う。


「ごめん・・。てか、あたし女なんですけど」


裕香が“大谷を好き”なんて言い出してから、妙に大谷を意識してしまっている気がする。



「ほら、行くぞ」


大谷はパンフレットを拾い終えると、そう言ってスタスタ歩いていった。