「は!?待てよ。俺まだ終わってねぇし」


大谷は山積みのプリントを「ポンポン」と手でたたいた。


「それはあんたが遅いから。ちゃんと分けたじゃん」


一刻も早く部活に行きたいあたしは、少しイライラした口調で答える。


「いいじゃん。手伝えよ」


なぜか命令口調の大谷。

・・・まぁ、もとから俺様な性格だけど。


「・・あたし部活行きたいんですけど」


そう言ってふと時計を見上げると、いつのまにかPM5:10。

9月の完全下校はPM6:00。
部活の片付けは、大抵15分前だから・・・

今から行っても、部活に参加できる時間は20分程度だ。


「俺だって部活行きてぇよ」


少しだけ、口を尖らせながら大谷が言った。


“だから、部活に行けないのは誰のせいだよ”

なんて言ってやりたかったけど、グッとこらえて代わりにため息を一つ。


「・・人にものを頼むときはどうするの?」


あたしは、軽く腕を組んで大谷を見下ろした。


すると、大谷は小さな声で

「・・・手伝って下さい」

そのあと、ペコッと軽く頭を下げた。


「・・ハハッ」


妙に素直な大谷がオモシロくて、あたしは笑った。