ギュー

廉の制服から香る香水の匂い。
細いわりにしっかりした胸板。

結乃もしっかりと廉の背中に
腕を回して離さないように
離れないように…強く抱き締めた。



「…………っグス」

幸せな部分と彼氏じゃない人
に抱きつくなんて…と自分の
彼氏になれない…

そんな思いが頭の中を過る
と自然に涙が溢れた。

上を向いても自然と涙が溢れた。


「何泣いてんの?」

廉が優しく結乃に問いかける。

「ううん…なんでもないよ…」


幸せだなんて廉の前じゃ
言えない。
付き合ってないもん。
こんな短時間で幸せって言ってはいけないような気がした…



「ごめんな…」

抱き締められた結乃はそっと
廉から離れた。


何でごめんなって言うの?