「さて、河崎…来週のリクエスト曲とそのリストは出来た?」

「はい、出来ました」

「北沢、曲のダウンロードとCDの作成は?」

「今日中には出来そうでーす!」

「という訳で…」


ニヤリと笑う日向部長。


「今日は何をやろうか?」


そう、この放送部の活動はこれだけじゃあない。

だからといって、発声練習をするわけでも、況してや新聞を作る訳でもない。

私達がやるのは…


「部長、新しい動画手に入れてきたんでアフレコどうッスか?」

「マジか!流石、北沢!じゃあ今日は“アフレコ”で」


動画が入れば、アフレコ。

漫画があれば、朗読。

新曲が入れば、歌唱。

他にも、演劇部と合同でドラマを撮ったりと様々な活動をしている。


因みにアフレコのスタジオは部長と琉人くんで放送室を改造して作られた。

結構、本格的である。


「今回はなんのアニメ?」

「“D,gray-man”。ちょっと前のやつッスけどね」

「あ~それなら友達に借りて読んだことある」

「じゃ、風香は大丈夫だな。花耶と河崎は?」


目をキラキラさせながら、こちらを向く部長。

D,gray-manって確か、エクソシストとノアの闘いの話だったよね。

私もお兄ちゃんに借りて読んだことある。


『私も読んだことあるので、いけます』

「僕も大丈夫です」

「OK~。北沢、今回は何人だ?」

「30分間だと…5、6人ってとこッスね」

「じゃ、全員だな。」


そのすぐ後に、役決めと台詞確認をしてスタジオに入った。

その他の器具は、またも改造され遠隔操作が効く。

部長の動画再生と共に映像が流れ始めた。


―…


〈顔上げちゃダメ…。まだ許さないんだから。〉


部長が台詞を言う、相変わらず綺麗な声だ。


〈どうして一緒に戦ってくれないの!!〉


ピリピリとした緊張感とキャラクターの焦りが伝わってくる。


《ごめん…。リナリー、助けてくれてありがとう》

〈…っ。何度だって、助けてやるんだから!〉


主人公役をする琉人くんの声も様になっている。

あぁ、やっぱりいい声はいいなぁとしみじみ感じた。


何故、こんな風にアフレコなんかをやり始めたかというと、部長の口癖と放送部のモットーである…

“やりたいコトはやる”

それが理由だ。

アフレコも朗読も、なんでもしたいことはやる。