症状といえば手が腫れ上がりうっ血して指さえ動かせない状態でした。さっそく普段通りに問診を行い、治療へ入っていきました。
数回治療を行い、症状も軽くなりだした頃から少し様子に変化が出始めていることに気がついたんです。治療中の会話が私生活を話すようになり、以前の彼はボクサーだとか暴力行為があったとかやっと別れて新しい事務仕事が見つかったばかりだというのに何故私だけがみたいな内容で泣き出したりした事もありました。やはり患者さんは心も身体も弱くすがる場所が病院になってしまうんです。
そんな中で病院の外で待っていたりと私に対して愛情に変わっていたのですね。私は医療従事者という観念から一線をひくようになりだした事が更なる悲劇になってしまうんです。ある日の夜中、当直で病院にいると一本の電話が私に入りました。彼女の両親からでした。薬を大量に飲んでの自殺未遂で病院に運ぶとのことでした。運ばれた時は意識が朦朧としていたのですが、何故か私の名を呼んでるんです。そして死なせてと仕切りに訴えていました。治療を済ませ命には別状ないとのことでした。
結局あと二回同じように続き最後は包丁をもって病院にきました。私をみちずれにするためだったようです。 何事もなく終わりましたが、彼女は私が問診によるものも優しくされたと思い込み、一線を引いたことにより、独占欲がうまれ向いて欲しいと思ったそうです。やはり私は医療に携わるには若すぎて、自分ではこれ以上人を治せないと決断をして病院をやめました。 その後オーストラリアに一年半住んで帰国し、父親の跡を継ぐ夢は諦めるようになったのです。そして知り合ったのが今の妻でした。