それから一カ月が過ぎようとしていました。新卒なのにリハビリテーション課の中心にされ、針、灸マッサージや機械による牽引など医者からの指示の元行っていたんです。病院は内科がかなり有名で透析や肝炎に強かったこともあり、ある日院長より数名の患者さんを東洋医学で治療にあたって欲しいとの依頼がありました。針による治療は整形外科のように患部の痛みがとれるといったものは治っていくという実感がありますが、内科系疾患は治すというより数値の判断により正常域に近づけ安定性を求め、薬に頼っていた身体の負担を減らし、数値が安定すれば自然と生活が楽になるんです。
悩み、迷い、本を引っ張り出したり学校の先生に電話を入れるなどしました。私は新卒には荷が重いよな、無理だろと思いながらも考えていくうちに楽しくなっていったんですよね。打つツボも施行手技も決まりいざ治療へ。そしたら物凄い反応、効果が出ていい方に患者さんが向かったんです。私から言わせてもらえば奇跡ですね。噂は広がりいつの間にか先生よばりされていました。かなり毎日が忙しくなりだしたときに一人の患者さんが私の治療で悪くなってしまったんです。確か一人針を打つと精神的や肉体的にもかなり疲れるんですよ、気を使うとよく言いますからね。1日3人を限定しまして行うようにはしてたんですけどその患者さんが運び込まれてきてベッドの上で苦しんでいる姿は今も忘れられません。何が悪かったのか考える中人を治すということは難しいし怖い。私が人を治すなんてとまだ21才の私は思ってしまったんです。たぶん医療に携わる方が一度は思い悩むことなんでしょうね。この気持ちを引きずりながら更なる関門がきました。原因不明で右手が腫れ上がりうっ血している25才位の女性患者さんでした。