いろんな人の話を聞けば聞くほど、施設への期待感は膨らみ、その半面自分との闘いが始まったんです。

そして数日後
施設見学で彼と私達が同じ時間を共有し施設内での生活を見ることになりました。

朝の校庭での体操はやはり嫌いなようで、機嫌が悪くなり、奇声をあげたりしていました。先生も今はあまり無理をさせないように、施設を好きになってもらうためと、彼が落ち着ける場所を探しては単独で遊んだりさせていました。
やはり無理に団体行動をとらせる事は、逆効果だというんです。

室内に戻ると今までが嘘のように静かに一人でハイハイをしては捕まり立ちで横に歩いたりして、遊びまわりだしたんです。

〔今は室内が好きみたいなんですよ。ただ歩けるようになりますよ、かなり足もしっかりして来ましたし、一歩がいつ出せるかの問題でしょうね。〕

〔えっ〕突然の先生の言葉に唖然としてしまいました。
予想を遥かに越えた言葉に。

〔本当ですか、確かに家でも行動範囲が広がっているように思ってたんですが、教えるにもどうしていいかわからなかったんですよ。〕

〔大丈夫でしょうね、教えてわかるものでもないし、彼には今は伝える手段がありませんし。〕

〔歩けるようになったら、最高です。一緒に散歩いけますから。〕
〔ただ大変ですよ、奥さんは更に気を遣いますから、範囲が広がっていきますからね。
わかってます?お父さんよりお母さんの負担が増えるんですから。〕

妻の負担は見ているだけでもわかっているつもりでいたんですが、1日の中で長い時間一緒にいる妻の負担がどれ程のものかは、仕事にでている私に全てわかっていなかったんです。
その事が後に自分自身にふりかかってくる事は、この時はまだわからなかったんです。

そして半月後、妻からメールが送られてきました。