顔つきで分かりました。さりげなく聞くと子供が出来たというんです。男は現実を見ず、理想を追ってしまうんです。独り喜んでしまったんです。妻のプライバシーを考え詳しいことはお話しませんが、子を産むことに抵抗があり、現実をみれば経済的にも無理があるために独り悩んでいたんです。産まれてくる子のことを考えると幸せに慣れないと。
二人で時間の有る限り話し合い、妻の精神的なプレッシャーをとる為に苦肉の選択をしました。そうです、中絶です。入院した部屋で私達は前夜今宿っている子に、〔ごめんな、情けないお前を産んであげられなくて、駄目な父親だと。見てて欲しいずっと私達のそばで頑張ってママに安心して産んで貰えるように守るから、その時はまた私達の子で宿って欲しいと。〕二人静かな病室で泣き続けました。もう逃げやしない、強い意思とともに。それから一年半が過ぎまた新たな問題が起こりました。