赤くなる顔を見せたくない。
だけど隠せるわけもなく。
「顔赤ぇ」
「見間違いよ。早く終わらせなさい」
そう言うのが必死だった。
嬉しくて、本当はたまらないけど。
顔に出しちゃいけないんだもん。
「…ていうかさ」
「何?」
平然を装うあたし。
不自然な身振り手振り。
そんなあたしに言葉をかける彼。
「俺、」
「失礼します…」
矢野くんの言葉を待っている時。
どこかで聞いたことのある声が
耳に飛び込んできた。
「隼人、まだ補習終わらない?」
いつか見た、矢野くんを
"隼人"と呼ぶ女の子。
どこかのクラスの女子生徒。
そして矢野くんの、彼女。
「来るなって言っただろ」
「ごめんね。でも寂しくって」
寂しくって、って。
言えるのいいなぁ、なんて
考えちゃうのあたしだけかな。