「あ~、朝比奈先生!丁度よかったわぁ」
職員室に入ると、
名前を呼ばれ、すぐに向かう。
そこには満面の笑みを浮かべた
英語科の先生がいる。
「ごめんなさいね。呼んじゃって」
「いえ…、あの」
さっきの矢野くんの話しないと。
そう思って声をかけた、のに。
かき消されて声が届かなかった。
「朝比奈先生にお願いがあるのよ~。聞いてくれるかしら?」
「あ、はい。何ですか?」
うふふふ、と目の前で笑う。
早く用件言って…、とか
思いながら立ち尽くす。
「先生が担当してる矢野のことなんだけどね」
黙って話を聞く。
話の内容は、矢野くんだけが
補習合格してないことと、
補習に英語科の先生が
忙しくて付き合えない、と
いう話だった。