どのくらいの時間がたったのでしょうか。

辺りは一面の銀世界になりました。

海斗は街の片隅にうずくまっています。

その前には雪に埋もれたこいぬがいます。

真っ赤に腫れ上がった手と顔と耳。

太陽が時期昇ります。

熱くなった瞳でこいぬをじっと見つめています。

「おきて…」

海斗は独り言を言っています。

「こんなところで寝たら風邪引くよ。」

海斗は冷たく硬直したこいぬをコートの中へ入れました。

人目を避けるように抱きかかえました。

同時に目から涙がこぼれます。

その涙はぬぐってもぬぐっても首筋を伝ってシャツにしみこんでいきます。


海斗はこいぬが暖かくなったような気がしました。

しかし、すぐに勘違いだと思い直しました。

こいぬを抱きかかえ家へと向かい歩き出しました。

「お前は俺に何をしてもらいたかったの?」

「俺はこいぬのお前に対してわがままだったかな?」

「俺がなぜ怒るのかわかるかい?少しでも俺のことをわかってほしい。

ただそれだけだったんだよ。」