その顔が憎たらしくて、私はフンッて感じでそっぽを向いた。


「ま、座ってください。何か飲みますか?」


 私は「要らないわ」と言ってテーブルにバッグを置き、肘掛椅子に浅く腰掛けた。

 小柳君は、「そうですか? 僕はビールをいただきますよ。喉が渇いちゃって……」と言って小さな冷蔵庫から缶ビールを出した。そしてもうひとつある椅子をずらして私から少し離し、深く腰掛けると長い脚を組み、缶ビールのプルタブをプシュっと開けた。


「本当に要らないんですか?」


「要らない」


「そうですか。じゃ、いただきます」


 小柳君は、美味しそうに喉を鳴らして缶ビールを飲み、フーッと言いながら缶をテーブルにコトンと置いた。そして、


「志乃さんって、意外と律儀ですよね?」


 と言った。