エレベーターで上に上がり、迷路のような廊下を、小柳君は迷わず歩いて行った。そして、予約したらしい部屋のドアにカードキーを差し、ドアを大きく手前に開くと、私を振り向き、「どうぞ」と言った。


 ツインの部屋は、広くはないけど狭過ぎるという程でもない。と言っても、長居するつもりはないからどうでもいいんだけど。


 背後でカチャッとオートロックのドアが閉まり、私は小柳君を振り向くと、


「慣れてるみたいね。ここにはよく来るんだ?」


 と、皮肉を込めて言った。


「あ、そうですね。時々、外国や遠くから来ていただいたお客様を、こちらにご案内してますから」


 小柳君は、平然とした顔でそう言った後、


「プライベートで利用するのは、今日が初めてです」

 と続け、

「もちろん、女性と一緒にという事もです」


 と言ってニヤリとした。