数回のコールで、『もしもし』と小柳君の応答があった。和也よりも、いくぶん低い声だ。


「志乃です」


『ああ、やっと連絡をくれましたか……』


「ごめんなさい」


『会って話をしたいのですが、今夜はいかがですか?』


「……大丈夫です」


『よかった。では、待ち合わせの場所と時間ですが……』



 私は小柳君が指定した場所と時間を承諾した。通話を終えた私は、溜め息を吐くと共に絶望感に打ちひしがれた。ランチ前だったけど、食欲も失せてしまった。


 小柳君が指定した待ち合わせ場所は、都心近くの、とあるシティーホテルのロビーだった。