それから数日後の昼休み。

 私は誰もいない階段の踊り場で、名刺の裏に手書きされた携帯の番号を自分の携帯に打ち込んだ。

 その名刺は、あの晩に小柳君から受け取ったもので、見ろと言われた裏面には、携帯番号の他に、次の一文が記されていた。


『ばらされたくなければ連絡をください』


 何をばらすかは、もちろん私の和也への想いに間違いないだろう。

 その秘密は、和也はもちろんの事、誰にも知られるわけにはいかない。でも、もし私が連絡をすれば、小柳君はそれと引き換えに何かを要求してくるに違いない。


 それが何かは、大体想像がつく。それだけに、なかなか決心がつかず、数日経ってからの連絡になってしまった。