「マジで?」


「マジよ」


「へえー、どういう風の吹き回し?」


「別に……。ただ何となく、男とか、恋とか愛とかに興味がなくなっただけ」


「へえー、って、ちょっと待てよ。だったら、何で昨日はあんな事したんだよ。恋人ごっことか言ってさ……」


「あんたは別よ」


 私は考える間もなく、そう即答していた。


「何で? 俺だって男だぜ?」


「それは……」


 『あんたの事が好きだから』なんて言えるわけもなく、代わりに私は、


「弟だからよ?」


 と答えた。

 私はこの時初めて気付いた事がある。それは、今までは和也が弟だという事を、私はずっと恨んできた。姉と弟ゆえに愛し合う事が出来ない運命を、呪ってきた。

 でも、血を分けた肉親である姉と弟なら、一生側にいられるんだ。例え男女の関係になれなくても、その気持ちさえ隠し通せば、ずっと愛する人を近くで見て、生きて行けるのだという事に。

 むしろ、この運命に感謝すべきなのかもしれない、と……